NICTは、日本時間2017年9月6日、Xクラスの大規模太陽フレア現象発生を観測したと発表しました。うち、日本時間20時53分に発生した現象の規模はX9.3と2006年12月5日に観測した太陽フレア現象以来の規模となっています。この太陽フレア現象に伴い、地球方向へのコロナガス放出および高エネルギープロトン粒子の増加が観測されています。地球方向へ放出されたコロナガスは、日本時間9月8日15時から24時頃に到来することが予想されています。
到来するコロナガスは、2008年1月から開始した第24太陽活動サイクル(ほぼ11年の太陽活動の周期)中、最大規模の影響を地球に与える可能性があります。影響が大きい場合、到来後数日間にわたり、地球周辺の宇宙環境や電離圏、地磁気を乱れさせる可能性があります。
NOAA(アメリカ海洋大気庁)は、今回のコロナ質量放出により発生する磁気嵐をG2-G3クラスと予測しています。NICTによれば、影響を受けて、通信衛星、放送衛星などの人工衛星の障害や、GPSを用いた高精度測位の誤差の増大、短波通信障害や急激な地磁気変動に伴う送電線への影響などが生じる恐れがあり、注意が必要です。
太陽フレア現象とは:
太陽の黒点群の領域で生じる爆発現象で、強い紫外線、X線、電波などが放射されます。また、規模が大きい場合は、太陽表面の高温のガスが惑星空間に放出される「コロナ質量放出」現象が生じることがあります。太陽フレアの規模は、地球近傍に到達するエックス線の強度によって、A、B、C、M、Xの5段階にクラス分けされており、アメリカの人工衛星GOESが常時観測している大気圏外の波長100 – 800ピコメートルのX線の流束に基づき決定されます。各クラスはさらに0~9の10段階に分けられており、X線強度が10倍になるごとにクラスが1つずつ上がります。なおXの上は設定されていないので、Xクラスの数字は10を超えることがあります。
コロナ質量放出により大規模な地磁気の乱れ(磁気嵐)が発生した場合、電磁パルスの発生による電子機器の破壊や、誘導電流による送電網の破壊などが発生する可能性があります。1989年に発生したX15規模と推定される太陽フレアは、カナダのケベック州で大規模停電を引き起こしました。
9/8 7:50AM追記:
NOAAによれば、現在もAR2673 (巨大フレアが発生した領域)の活動は続いており、9/7(世界標準時)にはM2.4、M1.4、 M7.3、X1.3のフレアが発生しています。これらのフレアでコロナ質量放出は観測されていませんが、アメリカでは短時間の短波帯のブラックアウトなどの影響が発生しています。
【関連情報】
通常の1000倍の大型太陽フレアを観測(報道発表資料)
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NICT 電磁波研究所 宇宙環境研究室 電離圏ワーキンググループ
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