Jアラートが発報されたこのタイミングで、2017年5月に取材・執筆した「ダイヤモンドSix」の記事が、ダイヤモンド・オンラインで公開されました。

メインで取材した神戸市の織部精機製作所は、元々神戸港の倉庫で、殺虫用の青酸ガスで作業員が亡くなる事故を防ぐための空気清浄機を作っていましたが、キューバ危機の時に「日本でもシェルターの整備が必要」だと考えた3代目社長・織部智男氏が核シェルターの設計施工を請け負うようになりました。また書籍を出版し、政治家や金融機関などに献本して、核シェルターの重要性を説き国による整備を訴えたのだそうです。(アイキャッチ写真はその書籍)

現在でも日本では「シェルター」についての建築基準はなく、同社が施工する核シェルターは「地下室」として建築確認申請を行っているそうです。

取材時に強調されたのが、「核シェルターは出るタイミングが難しい」ということ。実際に落ちてきたら、2週間は籠城覚悟ができるだけの物資を備蓄しておくように、と言われました。Sixの記事中には文字数の都合で入れられずカットした「シェルターの中」についての部分の下書きを公開します。

 織部精機製作所のモデルルームに設置されたシェルターに入ってみよう。キッチンに直結した階段を降りると、厚さ20センチの重い扉がある。その中は「気密室」と呼ばれるスペースで、その奥が居室となっている。外部と居室の間には必ず2枚扉を設置することになっており、同時に開放することはないように運用されている。もっと大きなシェルターではその手前に「除染室」と呼ばれる、放射性物質を洗い流すシャワールームがある。
気密室には食料や水、簡易トイレなどの備蓄物資が置かれている。放射性物質にはさまざまな種類がある。短寿命の核種が崩壊することで、放射線量は減衰し、およそ1000分の1程度まで減れば短時間外に出られるようになる。それまでの所要時間は約2週間。その期間を、シェルターから出ないで生き抜くための備えも必要だ。シェルターに入ることが想定される人数分×2週間分の食料、水、トイレの設備、日常服用している薬などを常日頃から蓄えておく必要がある。
さらに奥の居室には空気清浄機と簡易ベッド、寝袋などの寝具が設置されている。ひときわ目立つのが空気清浄機だ。放射能だけでなく、VXガスやサリンなどの化学兵器、炭疽菌などの生物兵器などにも対応する。電気がない時は人力でふいごを動かすようにして動作させることができる。24時間稼働し続けて88日間動作可能だが、「密閉した室内の酸素濃度が下がったら動作する」という使い方でもっと長期間使うことができる。核シェルターから出られないとされる2週間であれば十分耐えられる。フィルターの製品寿命は25年なので定期的に交換の必要があるが、それ以外のメンテナンスは不要だ。
また、外の状況を知るために重要なのがラジオだ。さらに、シェルターから出る時期を判断するために、外の状況を確認するための使い捨て防護服とトランシーバー、ガイガーカウンターも必要。電子機器は核爆発時に発する電磁パルスを浴びると回路が壊れてしまうので、鉛の箱の中に厳重に保管しておくことが推奨されている。

文中にないものでシェルター内に置いた方がよいものとしては、防護服の開口部を密閉するためのビニールテープ、工具類(はしご、バールなども)、身分証明書(全員分を多めに)、地図、辞書、常備薬、医学事典、トイレ始末用に防臭ゴミ袋と密閉できるゴミ缶、灯油コンロもしくは電熱器(調理用)、化粧品類、紙おむつ・衛生用品、時間をつぶすための本やゲームなど。

ミサイルが飛んでくるのは家にいる時とも限らず、Jアラートがなって5分以内に地下に駆け込める場所にいるとは限りません。最初の直撃を免れた後なんとしてでも生き延びるためには、シェルター建設は無理でも自宅の食料備蓄などは確認しておいた方が良いと思われます。

どうか杞憂でありますように。