目的のための農業と手段としての農業

By | 2017-09-02

京都府精華町の国際電気通信基礎技術研究所(ATR)が敷地内のビニールハウスで近隣住民が農作業を分担しながら作物を育てる「シェアリング農業」の実験を始めます。(「シェア農業」で作業分担 京都、IoT活用 – 京都新聞)東レ建設などと共に来年2月まで総務省の委託事業として実施し、自治体や法人などが運営して収益や地域の雇用創出につながるかを検討します。

ATRと東レ建設などが「シェアリング農業」を行う高床式砂栽培施設(京都府精華町光台・ATR)

650平米のハウスで小松菜、ルッコラなどを育てます。約50名の町民がサポーターとなって、スマホアプリで希望する作業や、作業できる曜日を登録して、農作業を分担します。センサーによるハウス内の情報取得で作業の最適化をはかります。ハウスには東レ建設が開発した「高床式砂栽培施設」を導入し、車いすでも、高齢者や女性でも作業しやすくなっています。

自分のできる範囲で畑作業に参加し、報酬としてとれた野菜がもらえるというのは楽しそうですが、実際のところ肝になるのは「センサーによるハウス内の情報取得と作業の最適化」でしょう。また、作業をどのぐらいの粒度に区切るのか、参加者の都合に合わせた作業の割当ても重要です。50人ぐらいなら人力でもなんとかなりそうですが、複数の圃場でもっと多くの人がかかわるようになれば、AIを利用した自動スケジューラーが必要になりそうです。また、作業ができる人がいない時にどう管理するのか、結局そう考えると、「省人化のためのIoTとは逆ベクトル」ではなく、「自動化を前提としたシステムが組みあがった上で、可能な作業を人が分け合う」という形でなくては上手く回らなさそうです。

上記のような理由で、農業として見た場合、多人数で分担することによる雇用創出や収益といったメリットはあまり無いのではないかと思います。一方で「農業をコアにした地域コミュニティづくり」あるいは「高齢者の健康増進、医療費抑制」といった側面では、大いに期待できそうなプロジェクトではないでしょうか。ウェアラブルセンサーを活用して作業中のバイタルデータも取得するようですが、できれば作業中以外のバイタルデータも取得・蓄積することで、そのあたりについてもしっかりと検証していただければと思います。

Print Friendly, PDF & Email